GREETING

ご挨拶

一般社団法人医療・医薬総合研究所

理事長 長野 明

私が薬価制度と出会ったのは1989年、当時の第一製薬(現在の第一三共)で日本製薬団体連合会の保険薬価研究委員会幹事にエントリーした時に溯ります。若手、素人の小職にとってその場は、薬価制度はもとより広く医療保険制度などを学ぶ大事なインプットの場でした。気がつけば、ワクチン会社の経営に携わるまでの凡そ四半世紀にわたるお付き合いになりました。

その間、日本製薬団体連合会、日本製薬工業協会といった業界内団体をはじめ経団連などの経済団体そして政府の審議会である中央社会保険医療協議会・薬価専門部会等に係わらせていただいた中で、様々な立場の方々のお考えを学ぶ機会に恵まれていました。私は、薬学部卒後製薬企業に勤務した者ですが、この間その様な立場に固執した考え方に終始することはなく、ごく一般的な日本国民の一人として、国の発展と世界平和を心から願う団塊の世代の一人だと自己評価しております。その様な履歴の私に諸先輩方からお話があり、2018年に、薬価制度を考える会の名で「薬価制度70年を振り返る」と題し社会保険旬報誌にインタビュー記事を連載していただいた後、2020年3月には、社会保険研究所から「薬価制度のエポックを辿る」と題した冊子に再編集し発刊していただきました。
その中で、『今日まで薬価制度の果たしてきた役割を振り返り、現行制度の理を探り、将来の薬価制度のあり方を提起したい。その際、議論に臨む基本姿勢は、医療保険制度の木も森もしっかりと見て議論を進め、各セクター交えてコミュニケーションをとりながらコンセンサスを重ねていき、時間軸も定めて結論を出す、その様なことを発信させていただき役割を終えました。

 

今年5月、『中長期的な経済成長の水準と連動した薬剤費総枠マネジメントとイノベーティブな医薬品の適正評価を両立させた薬価制度改革案』が発表されました。発表された内容を確認させていただきましたが、年金制度で活用されているマクロ経済スライドを薬価制度にも導入することで中長期的な経済成長に見合った薬剤費の総額上限を設定しつつ、革新的医薬品の価値に関する適正評価も両立させるとあり、びっくり仰天いたしました。
私は、経済学や財政学の専門性は全くない素人ですが、高齢者の一人として日々の生活費となる年金が、賃金、物価動向をベースとしたマクロ経済スライドを制度として取り入れたのは正解だと考えていますが、医薬品の価値評価換算の仕組みとしてキャップのかけ方に利用するのは無理筋の極みだと考え、強く反対する立場です。

 

我が国の医療制度で世界に誇りうるものは、ひとつは国民皆保険制度ですが、もうひとつは薬価制度であると思います。様々優れた面ももつ我が国の薬価制度ですが、医薬品市場が大きくなるとともに、改革の要請も強くなってきています。時代とともに制度は柔軟に見直されるべきであることはもちろんです。ただ、薬価制度は民間における新薬開発意欲や、民間の価格交渉をベースにするものであり、公的制度と民間市場経済の両方にまたがる性格を持っています。つまり、制度の評価、制度の改革議論はこの両者を俯瞰したものでなければなりません。
そこで、今回新たに【医療・医薬総合研究所】を設立し、広く我が国の社会保障体制、そのもとでの医療保険制度を踏まえつつ様々な調査研究などを行い可能な限り世の中に発信してまいりたいと考えております。更には直近の課題として、薬価制度関連のテーマにつきまして、当研究所の企画プロジェクトとして『薬価流通政策研究会』を組織し調査研究、議論と提言、発信を行うことといたしました。
広範なお立場の皆様のご理解とご協力そして議論への参加を切にお願い申し上げご挨拶とさせていただきます。

一般社団法人医療・医薬総合研究所

理事長 長野 明

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